「先生、もう全然かゆくないんです」

そう言いながら腕を見せてくださる方がいます。

確かに赤みもかなり落ち着いている。

そして次の一言。

「だから薬、やめました」

気持ちは、よく分かります。

毎日薬を塗りたい人なんて、そうそういません。

鏡を見ても赤くない。
夜もかゆくない。
掻かなくなった。

そうなると、

「もう治療は終わりでいいんじゃない?」

と思いますよね。

ところが、皮膚というのは少しややこしいんです。

「見た目」と「皮膚の状態」が同時にゴールするとは限らない

たとえば、火を消したあとの炭を想像してください。

炎は見えません。

煙もほとんど出ていない。

でも、触ってみると中に熱が残っている。

皮膚も、少し似たイメージで考えると分かりやすいかもしれません。

日本皮膚科学会の「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024」でも、見た目に症状がなくても潜在的に炎症が残っている状態について示されています。

だから、

「見た目がきれい=自己判断で薬を全部終了」

とは限らないんですね。

日本皮膚科学会のQ&Aでも、ステロイド外用薬で炎症が治まったあと急に中止すると、症状が悪化する場合があり、状態を見ながら薬を弱いものへ変更したり、塗る回数を減らしたりして慎重に調整すると説明されています。

ここ、とても大切です。

「薬をずっと塗り続けなければいけない」

という意味でもありません。

どうやって終わらせていくのかも治療の一部

ということです。

「良くなったから塗らない→悪くなったから塗る」の繰り返し

これ、心当たりありませんか?

赤くなる。

「まずい」と思って薬を塗る。

きれいになる。

「やった!治った!」

薬をやめる。

しばらくすると、また同じところがかゆい。

そしてまた塗る……。

患者さんからすると、

「薬を塗っても結局また出てくる」

という気持ちになってしまいます。

でも、もしかすると問題は薬そのものではなく、炎症を落ち着かせた後の維持の仕方にあるのかもしれません。

そこで出てくるのが「プロアクティブ療法」という考え方です。

日本皮膚科学会では、再燃を繰り返す皮疹について、抗炎症外用薬で皮膚を良い状態にしたあと、保湿剤によるスキンケアに加えて抗炎症外用薬を定期的に使用し、良い状態を維持する方法を説明しています。

そして保湿などのスキンケアも重要です。

アトピー性皮膚炎では皮膚のバリア機能が低下しているため、炎症が落ち着いたあともスキンケアを続けることが大切とされています。


ここからが、僕が漢方相談をしていて特に大切だと思っている部分です。

「では、同じように見える皮膚症状でも、なぜ人によって繰り返し方が違うのでしょう?」

ここを考えずに「皮膚だけ」の話で終わらせてしまうのは、少しもったいないと僕は考えています。

漢方では「皮膚だけ」を見ない

にんじん堂薬局の漢方相談で大切にしているのが、

「証」

という考え方です。

同じように赤く、かゆく見える皮膚でも、

乾燥が強い人。

ジュクジュクしやすい人。

季節によって悪化する人。

汗をかくとつらい人。

胃腸の調子まで崩れやすい人。

寝不足になると悪化しやすい人。

一人ひとり、背景が違います。

だから漢方では、

「アトピーだから、この漢方」

という単純な選び方ではなく、

今、その人の体がどんなバランスになっているのか。

これを伝統的な「証」の見立てから考えていきます。

舌、体調、便通、食欲、睡眠、冷えやほてり、汗のかき方など、皮膚以外の情報も大切な手がかりになります。

ここが、にんじん堂薬局が大切にしている漢方相談です。

もちろん、漢方を選択するからといって、処方されている外用薬を自己判断で中止するわけではありません。

医療機関での治療と漢方を対立させるのではなく、

「今の炎症をどう管理するか」
そして
「繰り返しにくい状態をどう目指すか」

この二つを分けて考えることが大切だと思っています。

「薬をやめたい」が本当の目的でしょうか?

相談していると、

「できれば薬をやめたいです」

という言葉をよく聞きます。

でも、少しお話を続けていくと、本当に望んでいることは別だったりします。

半袖を着たい。

夜、かゆみを気にせず眠りたい。

温泉に入りたい。

人に肌を見られることを気にしたくない。

子どもなら、思いっきり遊ばせてあげたい。

つまり、

薬をやめることそのものがゴールではなく、肌のことを考えずに暮らせる時間を増やしたい。

そこが本当の願いなのかもしれません。

日本皮膚科学会も治療目標として、症状がない、または軽く、日常生活に支障が少ない状態などを掲げています。

僕も、その考え方はとても大切だと思っています。

「薬を使った・使わなかった」だけで一喜一憂するのではなく、

今日はよく眠れた。
今日は肌を気にせず出かけられた。
そういう日を少しずつ増やしていく。

それも立派な改善ではないでしょうか。

明石市のにんじん堂薬局では、伝統的な「証」の見立てを基本に、一人ひとりの体質や症状の現れ方を丁寧に確認し、その方に合った漢方による体の整え方をご提案しています。

遠方の方、忙しくて来店が難しい方、人目が気になる方にはオンライン相談もあります。

「こんなことで相談していいのかな?」

という段階でも大丈夫です。

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